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「蒼き約束」by嵯峨さん


 俺は宇宙を漂っていた。あの時、俺は味方によって 愛機を攻撃された。全身が痛む。気力も失せたようだ、、 。モニターの赤い警告色が目に写る。機体も俺同様 ボロボロだった。「、、、様ぁねえな」誰に言うわけでも なく呟いた。 今まで俺はこいつに乗ってから一度も 直撃を受けたことがなかった。(もっとも直撃=死だが)
 まさか味方に裏切られるとは、、。俺は消されようとし たのか?何故だ、、?俺は任務を受け地球に降下した。 地球には楽園など存在しなかった。そこにあったのは 荒廃した土地と、城壁で囲まれた機械的な町だけだった。 俺たちは騙されていた。俺はそれを知ってしまった。
 だからなのか?死刑囚だった俺が生き延びるために こいつに乗ってほぼ死同然の任務についた。
 俺の生還は考えられてなかったのか? こうやって コクピットで考えていると疑問が土石流のごとく頭の中 で氾濫する。俺が殺した人間にも生きる目的があって、 俺に銃口を向けたんじゃないか、、。(何故こんなこと考 えちまったんだ?)数時間前の俺にはありえないことだ。 味方に撃たれたショックが原因か? 暗闇の中で光り輝く それは天使のようだった。形状は俺が乗る「死神」に 似てはいたが俺が烏だとしたらそれは白鳥。
 俺はこの謎の機体によって、襲撃を受けた。
 ーそう、あの時だ。

 幾条ものレーザーが俺に向かって踊りかかる。それは まるでミサイルのように俺を執拗に追い回す。
 この手の攻撃には無駄に動きまわってはいけないことを 俺はこれまでの戦いで悟っていた。レーザーに気をとられ た隙こそが敵の狙いだ。俺はぎりぎりまで引き付けて回避 する。だが警告音は止まらない。 ミサイルが飛来してき た。レーザーとミサイルの時間差攻撃だ。しゃれになら ない数のミサイルが襲いかかってくる。 だが、これは 分かっていたことだ。二十ミリ機関銃とワスプの同時発射 で全てのミサイルを撃ち落とすことに成功する。
 爆発の中から、巨大なシルエットが見える。四十メート ルをこすその化け物はまるで、くらげのような奇妙な 外見をしている。今までの攻撃で所々破損させているが 致命傷には至らない。しかしこちらの残弾数は残り 少ない。もう四分以上やりあっている。ガンポッドの弾が 切れたら、ただの戦闘機になってしまう。持久戦は不利 になる一方だ。意を決し、俺はブースターの出力を 最大限に引き上げる。ほぼ同じタイミングで奴はコア をむき出しにし、レーザーの充填を始める。
 「ここしかねェ!!」俺は奴の心臓目掛けて特効した。 俺はコアに衝突する直前で機体に急制動をかけた。
 俺は今持てる火器の全てをフルオープンさせる。
 レーザーの充填はそろそろ完了しそうだ。
俺はトリガーを引く。最後の攻撃だ。コアの表面装甲が 爆ぜ飛び内部機構が露出する。
 レーザーの充填は完了したようだ。レーザー砲門が赤く 光る。「こんなところで、、死ねるかよぉ!!!」
 俺は叫びトリガーを引き続けた。コア内部で爆発が 起きるがレーザーは止まらない。まだ生きている! 間に合わなかった?! コクピット内で俺は凍り付く。 弾はもう無い。この距離では回避不可能だ。目の前で コアが真っ赤に染めあがる。 ー死ぬのか。俺はー
 俺は目をつぶってその時を待った。閃光が起こる。 だが痛みはない。あぁ、レーザーだからか。しかし何故 まだ意識がある?まさか天国に行っちまったのか?
 馬鹿な事を思いながら俺は目を開けた。 そこには 天使がいた。いや、それは天使ではない。乗機によく似た 白い機体が化け物をしとめたらしい。閃光は奴の爆発 によるものか。 「貴官は選ばれた者だ」
 その時、ヒュペリオンから通信が入った。が意味 が分からない。選ばれた、だと? ヒュペリオンは続ける 。 「貴官の戦闘データはEOS UFG MK.IXにフィードバッ クされる。貴官は死後、二階級特進のうえ、シリウス勲章 が授与される。 おめでとう」
 天使が悪魔に変わったと俺は思った。俺に向けて 一斉射撃が始まる。 それからどうやって逃げ出してきた かはよく覚えていない。我ながらよく逃げ切れたものだと 思う。逃げ出したところで帰る家はないのに。あの場 で撃墜されたほうが楽になれたのではとさえ感じる。 だが、俺は生き延びようとした。いったい何故?
 この戦争の無意味さを伝えるため? ー違う。俺は そんなたいそうな人間じゃない。もっと大切なこと、、。
 地球が視界に入る。蒼い、、。宇宙からみる地球は どうしてこうも蒼いのか。月の人間が思いをはせるのも 無理はない(中身は外見とかけ離れているが)
 蒼、、、。蒼い瞳が脳裏に浮かぶ。そうだ。俺は 生きて帰らなきゃいけなかった。彼女にもう一度会うため に。蒼い瞳の彼女との約束を果たすために。
 計器をチェックする。まだしばらくは動ける。俺はブー スターに火をいれる。今、何をすべきか俺には分かってい た。今はまだ戦えない。だが必ず俺は戻ってくる。そう誓 い俺はこの宙域を離れた。