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「青い鳥」by嵯峨さん 風が僕の体を強く叩いた。 すぐに大きな音が聞こえてくる。 瓦礫が落ちてくるのも気にしてる余裕はない。 走る、走る― ここから少しでも早く逃げるため。 同じ考えの人達もひたすらに走る。 また風が来る、そして今度は爆発音がこの収容所を揺らした。 目の前にはここで知り合った人たちが倒れていた。 瓦礫に足をとられた人はたち僕に助けを求めるが、僕は走った。 同じように走っていた人たちから悲鳴が聞こえた。 看守たちが脱走している人たちに、銃を撃っているようだ。 僕は振り向かず走った。 銃に対する怖さなどはなく、出口に向かい走った。 死にたくないから走るわけじゃない、もう一度生きたいから走った。 神さまが我が侭を許してくれるなら、もう二度と離したくない人が居るから― 久しぶりの日の光に僕の目は何も映すことができず、しばらくしてようやく空を見上げることができた。 しばらく見ていなかったためだろうけど、その空は今までで一番きれいで青くて、、。 そして、その空のように青い羽をした鳥が飛んでいた。 その時の僕はそれが戦闘機と思わなかった。 今でも思っていない。 運ぶ青い鳥だったと 僕は今でも信じてる * 今日もまた街は炎に包まれる。 何故、それほど軍事的価値のないこの場所にまで戦火は広まるのだろうか。 地球の者からは「アインハンダー」と呼ばれ恐れられる戦斗機はこの地に現れ後、ひたすらに破壊を続けている。 逃げ惑う人間たちに機関銃を撃ち、ミサイルを放つ。 自らを倒そうとするものすでに無くなった空で、「それ」は街を悠々と見下ろす。 この街の収容所からは脱走者が続出している。 この戦闘の隙を見てのことだろう。 調度いい獲物を見つけた「それ」は銃を構え、だが撃つ事は無かった。 司令衛星からの帰還命令が出たのだ。 「それ」はこの街に全くの名残惜しさを感じず飛び去っていった。 戦闘が終わったようだ。 結果は地球側の被害を見れば一目瞭然だ。 あたしたちのような人間にはどちらが勝とうが知ったことではない。 異教徒と呼ばれた親のせいで「人権」というものを生まれながら持っていないあたしたちはドブネズミのような暮らしをするしかない。 あたしたちは何もしていない、なのにこんな仕打ちをする政府なぞ月に滅ぼされてしまえと本気で思う。 あたしは、ただ生きたいだけだったんだ。 あいつが居たから生きようと思ったんだ。 でもあいつはあの日、あたしの身代わりになって収容所行きになっちまって。 あたしたちは生きてちゃいけないの? どうしてあいつがここに居ないの? なんで撃たれなきゃならないの?あたしたちなにもしてないよ? どうして― 後ろから抱きとめられた。 涙で目が霞む。 この感じ、あいつのものだったから。 宇宙。 先ほどの戦斗機はヒュぺリオンの前にあった。 同じように数機が規則的に並んでいる。 「では、報告を。我が息子たちよ」 ヒュぺリオンは「それ」らを息子と呼んだ。 「それ」のデータを受け取るとまた口を開いた。 「EOSの現状機体での戦闘データは最早目標を超えた。これに最新鋭の機体があれば我が軍は勝つ」 白い天使達が目を開くまであと少しのことだ、、、、。 |
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